日本公開されたフランス映画の中でも最高峰の人気を誇る映画「かつて、ノルマンディーで」は、「ぼくの好きな先生」でお馴染みのニコラ・フィリベールが監督を務めた、感動のドキュメンタリー映画です。
単純に彼の映画監督としての軌跡をおうだけではなく、彼とそのまわりを取り巻く様々な人々の思いや感情、その人々の人生が重なりあって紡がれるストーリーは、映画を見た人々に深い感動をもたらすものとなっています。
このノルマンディーは、かつてニコラ・フィリベールが映画製作に本格的に関わることとなった映画「私 ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した」の撮影地であり、そこで彼が自らの映画の原点をたどるところから物語は動き出します。
1975年助監督として、映画「私 ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した」に参加したニコラ・フィリベール。この映画は、師匠でもあるルネ・アリオが監督を務め、19世紀に実際に起こった殺人事件とミシェル・フーコーの研究書をもとに作られた作品で、主要な登場人物をノルマンディーの農民たちが演じた作品でした。
30年の月日を経た現在、ニコラ・フィリベールは当時出演した人々を訪ねるためにノルマンディーの地を訪れます。そこで、彼は地元農民たちの人生に残る映画の痕跡を感じ、そこで当時映画の撮影で学んだこと、感じたことなどを振り返り、郷愁に思いを馳せるのです。
大きな展開や劇的に物語が進む事はなく、フランス映画らしい情緒と空気感を楽しむ作品ですが、映画に出演した人々がその後どんな人生を歩み、現在どのようにして暮らしているのか、そこでニコラ・フィリベールはどのような思いを感じ、それを映画としてどう作品に仕上げたのか、それこそがこの映画の最大の魅力といえるのではないでしょうか。